JP7FKFの備忘録

ヒトは,忘れる生き物だから.

TDR測定用のパルス生成器を作ってみた話

TDRって.

TDRとはTime Domain Reflectometryの略で,TDR測定というものは,時間領域反射測定ということになる.これで何をしようかというと,ケーブル類の障害点などがわかったりするのだ.なぜそのようなことができるのかというと,ケーブル類にパルス状の電気信号を入力すると,ケーブル内を伝搬する.ここで単一のインピーダンスを持つ同軸ケーブル内で障害があると,インピーダンスが不連続になったりする.このインピーダンス不連続点で,入力したパルスの信号の反射が起こる.この反射を検知し,入力したパルスと反射して戻ってきたパルスの時間差と,ケーブルの速度係数等を用いると,入射端から障害点(インピーダンス不連続点)までのケーブルの長さを求めることができる.

これは実際の通信の現場でも用いられており,例えば世界中に張り巡らされている光ファイバーがあるが,光ファイバーの障害を検知するためにこのTDRが用いられている.これはOTDR(Optical Time Domain Reflectometry)と呼ばれており,電気信号の代わりに,光を入射しその波形をモニタすることで,反射減衰量や,光損失,長さの測定ができるというものである.銅や樹脂で構成されている同軸ケーブル等でも,同じような測定が可能である.

今回は同軸ケーブル等の測定が行える,電気信号のパルスを出力するパルス生成器を製作してみた.

参考にしたのはこの記事である.
Nano Sec Pulser for TDR Measurement: アナログ回路のおもちゃ箱
この記事をもとに,回路図のトポロジはほぼ変えずに作った. 使ったものは,パルス発振器NE555,4回路入りコンパレータNJM2901,ANDゲート74HC08である.これは手近な部品を漁った結果,上記の記事にあるような高速コンパレータ等を用意できなかったことがある.とりあえず手近な部品で作ってみたという感じである. ただ,一つコンパレータの遅延用の抵抗値を変更している.少々高い抵抗に変更をしたので,立ち上がり時間が遅くなる原因になっているかもしれない.ちなみに,このパルス生成機で重要なのは立ち上がりが素早いことなのである.これにより分解能が上がり,より正確に距離を求めることができる.あと,使ったこのコンパレータはオープンコレクタ仕様になっていることに組み上げた後に気づいて発狂した.適当に出力ポートを抵抗を介して電源に接続してプルアップしておいた.

完成したモノはこんな感じ. f:id:jp7fkf:20171110171303j:plain
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電源供給用のDCコネクタ,電源SWとLED,出力用のBNCコネクタをケースに取り付け,内部の回路は適当にユニ基盤に実装してホッドメルトで固定している. これで測定を行うとこのような感じになる.
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一つ目のパルスと二つ目のパルスが見て取れると思う.この間隔を読み取ると約nsである.この測定したケーブルは1.5mのRG316のSMAケーブルをSMA-JJで2連結したものであり,末端は解放となっている.このRG316ケーブルの速度係数は0.7らしい.
パルス間隔は読み取ると約30nsであるから,これをもとに計算を行うと
length[m] = cvt/2
(ここで,c: 光速[m/s], v: 速度係数, t:遅延時間[s]である.)
から,
0.2998 * 0.7 * 30 / 2 = 3.1479[m]
ということで,BNCの変換ケーブルやら,SMA-JJの長さ等を考えると,ある程度の誤差がありつつも,大体のケーブル長が求められたと思う.

このように,インピーダンスの不連続点が電気的な測定で求めることができるのである. 例えば特性インピーダンス50Ωの同軸ケーブルの先に75Ωの特性インピーダンス同軸ケーブルを接続したりすると,合計3つのパルスが得られ,接続点で振幅が変化したりする.ちなみに末端をショートすると,振幅が逆になったパルスが帰ってくる.これは反射係数が1から-1までであり,ショート状態の場合は反射係数が-1となり,信号の符号が逆転するということを端的に表しているわかりやすい例だと思う.

という感じで,パルス生成器を作って,TDR測定ができることが確認できました.同軸が怪しかったりしたらこいつで測定して修理の目安になったりしてよさそうです.

References