JP7FKFの備忘録

ヒトは,忘れる生き物だから.

交流回路の進み,遅れの話

交流回路を勉強しているとよく見るのが,「コンデンサは進み要素だ」とか,「コイルは遅れ要素だ」とかいう表記を見つけたりします.
いや,確かに間違っていないと思いますが,実は「コンデンサは遅れ要素だ」,「コイルは進み要素だ」などと言っても間違いではないと思っています.
これは基準をどう取るかという問題で,"何が","何に対して"遅れ,進みであるかが重要です.

コイルは,"電圧に対して電流が","遅れ"であり,"電流に対して電圧が","進み"であります.
逆にコンデンサは,"電圧に対して電流が","進み"であり,電流に対して電圧が","遅れ"であります.

電気回路を勉強したての頃,これでちょっと迷ってしまったことがあります.
基準がどっちだかわからなくなることがあったからです.
進み,遅れという相対的な議論をしているにもかかわらず,基準が曖昧だったのです.


また,電気回路を学ぶときにフェーザ表示,フェーザ図などを見たことがある人もいるかも知れません.
これは,ガウス平面に対して複素数で表される電流,電圧をプロットできるという図です.
フェーザ表示はその複素数のmagnitude(大きさ)とphase(角度,つまり基準との位相差)を表します.
このフェーザ図を用いると,"電流を基準"として,理想コンデンサを直列につないだとき,電圧は虚軸の負の向きを指します.
これは,電流に対して電圧が90度遅れであることを示しています.
また,理想コイルを直列につないだとき,同様に,電圧は虚軸の正の向きを指します.
これは,電流に対して電圧が90度進みであることを示しています.
図に示すと以下のようになります.
f:id:jp7fkf:20160927172934p:plain

時系列に見ると,このフェーザ図が時間ごとに反時計回りに回転します.
コンデンサを直列につないでいるときに関して,時系列ごとに見てみます.
f:id:jp7fkf:20160927175311p:plain
ああ見にくい....
これをもっと繰り返すと...
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ご覧のように,遅れ,進みを議論するときによく用いられる時系列のグラフになります.
(keynoteを使ってちまちま書きました.なんとかできた)
こんな風に理解すると,理解しやすいかも知れませんね.

普段,時間と電圧,電流のグラフで遅れ進みを議論するときは,「コンデンサは,"電圧に対して電流が","進み"」などと,電圧を基準にコンデンサは進みだ!という風に教えられることも多いでしょう.
しかしこのフェーザ表示では,基準を電流とする(実軸に電流を重ねる)ことも多くあり,この場合は電流を基準に電圧は遅れなのです.
このあたりが遅れ,進みがこんがらがる要因な気がします.
(私はこれでこんがらがった記憶があります)


話は変わりますが,一般に現実世界のコンデンサやコイルは直列抵抗成分などを持っています.
もちろんコイルには線間容量が,コンデンサにはESLの成分もあります.

このような様々な要素から,現実世界のLやCは,0度から90度の間の範囲で位相をずらすことになります.
純粋なコンデンサやコイルはぴったり90度ずれることになっていますが,一般に現実ではそれは不可能です.
LCRメータで,位相角をみることができるものがありますが,人間が巻いたコイルなどを測定すると位相角は89度とかになります.

今回はLCRと交流の話になりました.
少しくらい復習になった気がする.
遅れ,進みを議論するときは基準を大切にすること,フェーザ図なども基準が大切ですというのがこの記事のまとめです.